編著: 神川 貴実彦
出版社: 日本実業出版社
管理職になりたての頃は、「コンサルタントの思考法はコンサルタントだけのもの」という印象を持っていました。しかし、事業会社で部門運営や組織マネジメントを担うようになり、改めて日本実業出版社の『コンサルティングの基本』と『コンサルティングの基本 ベストプラクティス集』を読み返してみると、その考えは大きく変わりました。
これらの本で紹介されている内容は、必ずしもコンサルタントだけの専門技術ではありません。むしろ、組織のリーダーや管理職が身につけることで、より良い意思決定や問題解決ができるようになる「思考の型」だと感じます。
「答えを出すこと」ではなく「考え方を整理すること」
多くの人はコンサルタントに対して、「難しい問題の答えを持ってきてくれる人」というイメージを持っているかもしれません。
しかし本書を読むと、実際にはその逆であることが分かります。
問題を構造化し、論点を整理し、事実を集め、仮説を立てて検証する。
こうしたプロセスを通じて組織が自ら答えを発見できるよう支援することこそがコンサルティングの本質です。
ロジックツリー、仮説思考、MECE、イシュー設定といったフレームワークも、単なる知識ではなく「複雑な状況を整理するための道具」として紹介されています。
上層部になるほど必要になる視点
私自身、現在は海外拠点の組織運営に携わっています。
組織運営の責任が大きくなるにつれて感じるのは、上位のマネジメントほど「答えを持っている人」ではなく、「問いを設定する人」でなければならないということです。
部下から様々な課題が報告されます。
- プロジェクトが遅延している
- 予算が厳しい
- 人材が不足している
- 新しい技術領域に投資すべきか迷っている
こうした課題に対して、表面的な対応策を考えるだけでは十分ではありません。
そもそも何が本質的な課題なのか。 なぜその問題が起きているのか。 本当に解決すべき論点は何なのか。
本書で紹介されるコンサルティングの考え方は、まさにこうした問いを設定する力を鍛えてくれます。
自分たちで考えられるようになる
特に印象的だったのは、本書を読むことで「コンサルタントに依頼する前の準備」が格段に向上することです。
現実には、全ての課題について外部コンサルタントを活用できるわけではありません。
予算の制約もありますし、そもそも経営課題は最終的に自社で判断し、自社で実行しなければなりません。
だからこそ、
- 問題を構造化する
- 仮説を立てる
- 必要なデータを集める
- 解決策を比較する
- 関係者を巻き込む
という一連の流れを組織内で実践できることが重要です。
本書は、コンサルタントになるための本というよりも、「自分たちで考える組織になるための本」と捉えた方が本質に近いように思います。
『ベストプラクティス集』が実践編として優秀
『コンサルティングの基本』が原理原則を学ぶための教科書だとすると、『ベストプラクティス集』はその実践編です。
資料作成、ファシリテーション、ヒアリング、分析、報告など、現場で活用できるノウハウが具体的に整理されています。
特に管理職やプロジェクトリーダーの立場になると、社外向けだけではなく社内調整の場面でも非常に役立ちます。
実際、組織間の利害調整やプロジェクト推進では、コンサルティングファームの案件と同じように、論点整理や合意形成が求められるからです。
まとめ
この2冊は、
- 若手ビジネスパーソン
- プロジェクトマネージャー
- 管理職
- 事業企画担当者
- DX推進担当者
におすすめできます。
特に管理職以上の方には、「コンサルタントになるため」ではなく、「より質の高い意思決定を行うため」に読んでみてほしいと思います。
経営層や上級管理職になればなるほど、答えを出す力以上に、問いを立てる力や問題を構造化する力が求められます。
その意味で、この2冊はコンサルティングの入門書であると同時に、マネジメントの教科書でもあると感じました。

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