著者: 安宅 和人
出版社: 英治出版
ビジネス書の定番として長く読まれている『イシューから始めよ』。本書のメッセージは非常にシンプルで、「何を解くべきかを考えてから取り組む」というものです。
今では多くの人が知っている考え方ですが、私自身は最初に読んだとき、頭では理解できてもなかなか腑に落ちませんでした。
その理由は、自分自身の仕事の進め方にありました。
与えられたことを順番にこなす完璧主義タイプだった
私はもともと完璧主義なところがあります。
仕事を任されると、まずは与えられた項目を整理し、一つずつ確実に終わらせたいと考えるタイプでした。
チェックリストがあれば上から順番に潰していく。依頼された内容は可能な限り漏れなく対応する。まずは行動して、最後までやり切る。
そうした進め方が誠実であり、仕事としても正しいと思っていました。
そのため、本書で語られる「まずイシューを見極める」という考え方には少し違和感がありました。
「与えられた仕事をやる前に、本当にやる必要があるのかを考える」
という発想が、自分の中にはあまりなかったからです。
当時は、立ち止まって考えるよりも手を動かした方が前に進んでいる気がしていました。
本書が教えてくれるのは効率化ではない
本書を読む前は、生産性向上の本だと思っていました。
しかし読み進めると、単なる効率化の話ではないことが分かります。
本書が問いかけているのは、
「その仕事は本当に価値があるのか」
ということです。
どれだけ頑張っても、重要ではない課題に時間を使っていれば成果は限定的です。
逆に、本当に重要な課題を見極めることができれば、すべてを完璧にこなさなくても大きな成果につながります。
私が印象に残ったのは、「生産性とはたくさん仕事をすることではない」という考え方でした。
多くの人は仕事量を増やすことで成果を出そうとします。しかし本当に大切なのは、成果につながる課題に集中することです。
忙しくなってから本当の価値が分かった
正直なところ、本書の価値を実感したのは読んだ直後ではありませんでした。
むしろ仕事が忙しくなってからです。
担当する業務が増え、管理する範囲が広がり、限られた時間の中で結果を求められるようになると、すべてを完璧にこなすことが現実的ではなくなります。
そんなときに必要になるのが、
「何をやるか」
よりも
「何をやらないか」
という判断です。
時間は有限です。
すべての課題を100点で仕上げることはできません。
だからこそ、本当に重要な課題を見極めて、そこに時間を集中させる必要があります。
本書が伝えているのは、まさにその考え方だと感じています。
管理職になってさらに実感したこと
個人的には、この本の価値は管理職やリーダーになってからより理解できるようになりました。
担当者であれば、自分の時間の使い方を考えれば済みます。しかしマネジメントをする立場になると、自分だけでなくチーム全体のリソースを考えなければなりません。
メンバーの時間も貴重です。
そのため、
「この分析は本当に必要なのか」
「この会議で決めるべきことは何か」
「このプロジェクトの成功とは何か」
を考える場面が増えます。
そうした時に、「まずイシューを特定する」という考え方は非常に有効です。
まとめ
『イシューから始めよ』は、仕事を速く終わらせるための本ではありません。
本書が教えてくれるのは、「何に時間を使うべきか」を考えるための思考法です。
私のように、与えられた仕事を順番にこなし、完璧に仕上げようとするタイプの人ほど、最初は馴染みにくいかもしれません。
しかし仕事が忙しくなり、時間が不足しがちになるほど、本書の考え方は力を発揮します。
今でも新しい課題に直面したときは、「まず解くべきイシューは何か」を意識するようにしています。
限られた時間の中で成果を出すためには、努力の量だけでなく、努力を向ける方向を間違えないことが大切だと、この本から学びました。

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